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環境DNAのサンプリング方法

 水サンプルから環境DNAを濃縮する方法は、大きく分けてフィルター濾過法とステリべクスを用いた方法がある。ステリべクスを用いた方法は、分かりやすくその方法が映像で報告されている(Miya et al., 2016)。一方で、フィルター濾過法は、Minamoto et al., 2016を参考にして頂けたらと思う。
 どちらの方法にも一長一短がある。例えば、ステリべクス法は、その場で濾過しRNA laterを添加することで常温での保存が可能である。またフィルター法より検出感度が高いと考えられている。しかしながら、すぐ詰まるという欠点があるため、濁った水サンプルにはあまり向かない。また、DNA抽出する際に恒温槽や遠心機も必要なため、実験器具が整っていない施設ではDNA抽出が行いない。一方で、フィルター法は、安価で特殊な実験器具を必要としないというメリットがあるが、DNA抽出時のコンタミやフィルターの保存が冷蔵や冷凍しなければならないなど野外では不向きな点がある。
 最後に、採水だけ行って、それ以降の作業は共同研究者や委託する場合は、塩化ベンザルコニウム(オスバン; Yamanaka et al., 2017)を水に対し0.01%添加することで、常温でも保存が可能です。塩化ベンザルコニウムを添加しない場合は、冷蔵が推奨されています。冷凍すると解凍時に細胞が壊れ、環境DNAがフィルターを素通りしていまう可能性があるため、冷凍は推奨されていません。

以下にサンプリング方法をいくつかご詳細するので、自分に合った方法でサンプリングしてください。


サンプリング方法1〜フィルター濾過法〜


用意する道具
@ 以下のように吸引装置
A GF/Fフィルター(0.7 um))


(引用:http://www.rikagakushop.com/design/dejima/routo.jpg)

採水方法

1. 使用前に水と触れる実験道具をブリーチする。
2. ろ過装置を組み立てる。
3. AGF/Fフィルターを使用して、吸引ろ過を行う。



サンプリング方法2〜ステリべクスを用いた方法 (手動)〜


用意する道具

@ 50mL シリンジ
A ステリべクス(0.22 um)
B ステリべクスの出口の蓋
C ステリべクスの入口の蓋
D パラフィルム(2枚)
E RNAlater (2 mL)
F スポイト
G 手袋



採水方法

1. G手袋をする。
2. バケツ等で水をすくう(省略可)
3. @シリンジに水を充填する。
4. 充填した@にAステリべクスを装着する。
5. 水を押し出す。
6. @シリンジからAステリべクスを外す。
7. 人力で押し出せなくなるまで、3-6を繰り返す。
8. Aステリべクスに水が残らないように、空にした@シリンジで押し出す。
9. Aステリべクスの出口にB蓋を付け、Dパラフィルムを用いて取れないようにする。
10. ERNAlaterをFスポイトで吸う。
11. FスポイトをAステリべクスに差し込み、RNAlaterを添加する。
12. AステリべクスにC蓋を付け、Dパラフィルムを用いて取れないようにする。



サンプリング方法3〜ステリべクスを用いた方法 (吸引)〜


Miya M, Minamoto T, Yamanaka H, Oka S, Sato K, Yamamoto S, Sado T, Doi, H. Use of a filter
  cartridge for filtration of water samples and extraction of environmental DNA. Journal of Visualized
  Experiments 2016;117, e54741. [LINK]



サンプリング方法4〜ステリべクスを用いた方法 (ペリスタポンプ)〜


用意する道具


弊社HPでろ過システムの使用機材を公開しています。



実際濾過している映像







参考文献 (フォーマットが異なるのはご了承下さい)

Minamoto T, Naka T, Moji K,Maruyama, A (2016) Techniques for the practical collection of
  environmental DNA: filter selection, preservation, and extraction. Limnology 17(1), 23-32. [LINK]
Miya M, Minamoto T, Yamanaka H, Oka S, Sato K, Yamamoto S, Sado T, Doi, H. Use of a filter
  cartridge for filtration of water samples and extraction of environmental DNA. Journal of Visualized
  Experiments 2016;117, e54741. [LINK]
Yamanaka H, Minamoto T, Matsuura J. et al. A simple method for preserving environmental DNA in water
  samples at ambient temperature by addition of cationic surfactant. Limnology 2017;18(233). [LINK]

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